係り結び

係り結びというのは形式的には係助詞と文末の語形変化との呼応関係、あるいはそうした呼応関係が現れる文のことをいいます。しかしもっと本質的に言えば係り結びというのは係助詞が文中のある要素を強調する文法上の現象のことです。文末の語形変化は重要ですが付随的な現象でしかありません。学校で習う係助詞には「ぞ」「なむ」「や」「か」「こそ」の5種類があり、「こそ」だけは文末が已然形となり、それ以外は文末が連体形となります。

係り結びの歴史

係り結びは奈良時代から平安時代にかけて用いられていた言い回しで当時の人たちは口頭でも係り結びを用いていました。(もちろん音韻は現代とは異なりますが係り結びの文自体は口頭でも文章でも一緒です。)ところが平安時代の終わりごろから鎌倉時代にかけて係り結びは次第に崩れ始め、室町時代の頃には口頭ではほとんど使われなくなったと言われています。

係助詞と文末の語との呼応関係としての係り結び

普通高校までに習う係り結びというのは形式的な面を重視して係助詞と文末の語形変化の対応のことであると説明されます。「ぞ」「なむ」「や」「か」が用いられたときはこれに呼応して連体形で結び、「こそ」であれば已然形で結ぶというのです。大野晋によれば結びが終止形でない理由は係り結びの成り立ちが倒置であったからだそうです。

ただしこの呼応関係というのは係り結びの本質的な性質ではありません。というのも係助詞までで結びが省略されたり、様々な理由ではっきりと結びが現れないこともあるからです。結びがない場合でも係り結びは係り結びなのです。係り結びの本質は係助詞そのもの、そしてその意味にあります。

文中の要素の強調のための係り結び

学校で習う古文では「ぞ」「なむ」「こそ」が強調で「や」「か」が疑問、反語であると習います。確かに「や」と「か」には疑問の意味が含まれますが、本質的には係助詞の中核的な意味はすべて強調であるといえます。

そもそも強調とはなんでしょうか。簡単に言えば強調というのは対比です。つまり選択関係にある他の要素と比較したうえであるものを強調する、あるいは何かを強調するときには必ずほかの選択肢との比較が同時に行われると言ってもいいです。これは現代語の中の「こそ」にも残っています。例えば次の文

「彼女こそ運命の人だ」

この文には「他の誰でもない彼女」という他との対比による強調の意味が込められています。もちろん古代の「こそ」と現代の「こそ」とでは使われ方や意味合いが異なる場合もありますが、本質的な強調の意味は同じなのです。この対比による強調というのはすべての係助詞にいえることです。